ビットコインが今のように世の中で注目されるきっかけになったのは、ビザンチン将軍問題に対する現実解(現実解とは、完全ではないが、考えられる最上の解決策という意味です)を提示したからだと言われています。
では、ビザンチン将軍問題と何なのでしょうか?
かつてヨーロッパにビザンチン帝国という帝国がありました。ある時、ビザンチン帝国の将軍9人がある都市を包囲して攻め落とそうとしていましたが、どうやら9人の将軍がそれぞれ持つ部隊9つが全て協力して攻めないとこの都市は落とせそうにありません。1部隊でも欠けると攻撃は失敗してしまい痛手を負うことになってしまいます。ここで、全軍で攻め入るか、全軍で撤退して体勢を立て直すかの2択を迫られることとなり、全将軍の間で投票することになりましたが、各部隊から伝令が到着し「攻撃」4票、「撤退」4票となってしまい、最後の1部隊の投票で「攻撃」か「撤退」かが決まる状況になりました。しかし、実は最後の将軍はビザンチン帝国に恨みがあり、帝国を裏切りたい=この作戦を失敗させたいと考えていて、「攻撃」の4部隊に「自軍は攻撃する」という伝令を送り、残り4部隊に「自軍は撤退する」の伝令を送るのです。
そうすると「撤退」伝令を受けた4部隊は、多数決の結果「全軍撤退」と判断します。そして、「攻める」伝令を受けた4部隊は、多数決の結果「全軍一斉攻撃」と判断し攻めますが、全軍一斉攻撃となりませんので、戦力が足りず敗退します。
すなわち、ビザンチン将軍問題とは、離れた将軍同士では、悪意ある将軍によって、攻撃または撤退の決定(全体の1つの意思決定)ができなくなる可能性があるという問題のことです。
ビットコインは分散型ネットワーク(中央管理者のいないネットワーク)を使用しているため、同様の問題が懸念されますが、ビットコインでは、PoW(Proof of Work)というコンセンサスアルゴリズムを採用することで、ビザンチン将軍問題に現実解を示したのです。
PoWでは、マイニングという(ある値を求める)計算をして、初めに正解を出した人が取引の承認を行い、新たなブロックを追加する権利を得られます。この計算の正解者には報酬が与えられるため、多くの人がこの報酬を求めて計算勝負をします。
こうした仕組みによって、不正を働こうとした人は計算に参加している人全体の50%を超える計算力を得ない限り取引記録の改ざんが出来ない(逆に51%を超える計算力を持つと改ざんできてしまい、これを51%攻撃と言います)ため、現実的には改ざんが不可能だとして、ビザンチン将軍問題に現実解を示したとされています。